2024.07.01更新↺
こんにちは。
これから乳がんの手術を控えている人や、治療中の方で
漠然とリンパ浮腫への不安を抱いている人は多いのではないでしょうか?
「リンパ浮腫ってなに?」
「術後は何ができて、何をしてはいけないの?」
ネット上には多くの情報があり、乳がん経験者さんも言っていることが人それぞれ・・・
私は実際に術後のリハビリを迎えるまで不安でいっぱいでした。
こちらの記事では、私がリハビリ中に理学療法士さんからの説明で
学んだことを書いています。
ネット上にはリンパ浮腫について多くの情報が飛び交っていますが、
実際に病院で教わった内容は
『行動制限はほとんど無し、腕に負担をかけない工夫をするだけ』
というとてもシンプルな内容でした。
注意することが多く感じるかもしれませんが、難しいことは一つもないので
慣れてしまえばこっちのものだと思っています。(笑)
ぜひ参考にしてください。
リンパとは
リンパとは簡単に言うと、静脈に回収されなかった
水分やタンパク質などの老廃物(リンパ液)の流れです。
体内を流れる老廃物の90%は静脈に流れており、
残りの10%がリンパ管の中を流れています。
リンパ管は血液と同じように、ほぼ全身にくまなく分布しており、
リンパ管の途中にいくつかリンパ節というものがあります。
リンパ節は、リンパ管を流れてきたリンパ液の中に細菌などの
不要物質がないか確認し、免疫機能を発動する重要な所です。
わきの下や脚の付け根、首などにあります。
リンパ浮腫とは
リンパ浮腫とは、流れが悪くなったリンパ液が過剰に溜まったうえに、
皮下にしみ出してむくみが出てしまった状態のことを言います。
私もそうですが、乳がんの人は手術でわきの下のリンパ節(腋窩リンパ節:えきかりんぱせつ)を
切除したり、抗がん剤治療や放射線治療をする場合があります。
そうすると、リンパ液の流れが悪くなることがあります。
流れが悪い場所では、リンパ液が過剰に溜まってしまい、
皮下にしみ出してむくみが生じてしまうのです。
リンパ浮腫は治療した場所により、生じやすい場所が決まっています。
(=対処しやすいです。)
私の場合は、右側の腋窩リンパ節を切除しましたので
右腕と右の上半身(おへそから首までの辺り、背中も含む)に起こりやすいです。
左を切除された方は左側です。
リンパ浮腫の厄介な所は、いつ発症するかわからないところです。
術後すぐに発症する場合もあれば、数か月、数年後に発症する場合もあります。
また、一度発症してしまうと治りにくいという特徴もあります。
そのため、発症させないように予防をしていくことがとても大切になるのです。
リンパ浮腫になりやすい人の特徴
リンパ浮腫を発症する人の割合は全体の2~3割とのことです。
腋窩リンパ節を切除した人なら誰しもリンパ浮腫になる可能性がありますが、
リンパ浮腫になりやすい人の特徴としてわかっていることもあります。
それは、太っている人です。
私は手術の前日に体脂肪率を測定してもらい、管理栄養士さんから指導を受けました。
私は体脂肪率が30%あり、30%以上の人は肥満の扱いになるので
これ以上体脂肪率が上がらないように注意するように言われました。
(できれば体脂肪率は25~28%ぐらいに減らせるとより良いとのこと)
脂肪が多いとなぜリンパの流れが悪くなってしまうのかというと、
リンパ管の横には脂肪の層があり、脂肪の層が厚いとリンパ管を圧迫して
リンパ管を細くしてしまうのが原因だそうです。
現状では、太っていること以外に、リンパ浮腫になりやすい人の特徴は
明らかになっていないとのことです。
こちらはエビデンスがあるわけではありませんが、
理学療法士さんの経験上、リンパ浮腫を発症してしまった人に
何か思い当たる行動があるか確認をすると、下記のような声を聞くことが多いそうです。
・大掃除や引っ越しで同じ姿勢で重たい荷物を多く運んだ。
・買い物で購入した商品の袋を、腕の同じ個所に長時間かけてしまっていた。
(ハンドバックをずっと同じ個所にかけているのも同様にNG)
これらの点をを踏まえたうえで、次にリンパ浮腫の予防方法について説明していきます。
リンパ浮腫の予防方法
大きく3つの項目に分けていますが、その中でも特に重要なのは
最初の2つの項目(運動とスキンケア→特に保湿)です。
こちらの2つの項目について詳しく説明いたします。
体重管理・適度な運動
自分の標準体重を計算し、標準体重を維持するようにしましょう。
【標準体重=身長(m)×身長(m)×22】
そのために必要なのは、バランスの良い食事と運動です。
運動の必要性についてですが、体重管理に必要なこと以外に、
筋肉を動かすことに大きな意味があります。
腕を動かすと筋肉が収縮と弛緩を繰り返し、その動きがリンパ管にも作用して
リンパ液の流れを促してくれます。
つまり筋肉がポンプのように作用をしてくれるのです。
中でもウォーキングや筋トレ、ラジオ体操は特におすすめとのことです。
私は乳がんになったことをいいきっかけと思い、
手術の傷が落ち着いたら筋トレを始める予定です。
理学療法士さんに筋トレの注意点を伺いました。
・術後1か月間はウォーキングと、リハビリで教わった体操だけにとどめておくこと。
・ダンベルなどの重りを使用する筋トレの場合は、
とても少ない重量から始め、負荷の増やし方を細かくすること。(いきなり重量を上げたりしない)
こちらの2点だけでした。
私はてっきりやってはいけない種目があるのではないかと思っていましたが、
実際にはそのようなものはなく驚きました。
腕を長時間同じ姿勢で固定したりしない限り問題ないとのことです。
(私は筋トレに詳しくないので思い浮かばないのですが、
もしそのようなやり方をする筋トレがあるようでしたら避けた方がいいと思います。
担当の理学療法士さんに相談してみてください。)
私の通っている静岡がんセンターでは、術後1か月後に病理検査の結果を聞きに行きます。
そのタイミングで担当の理学療法士さんに会い、術後腕の可動域が
どの程度回復したか確認してもらう予定になっています。
私はその確認を終えてから本格的に筋トレをスタートさせようと計画しています。
スキンケア
肌を清潔に保つ
手洗いを丁寧に行うことも大切ですが、これまでと大きく変わるのは、
掃除やガーデニングなどの手が汚れてしまう作業をするときは
ゴム手袋を使用するということです。
土には多くの雑菌がいるので、土いじりをする場合は要注意です。
日焼け対策をする
日焼けをすることで肌が弱くなることで、傷ができやすくなり
菌が入りやすくなります。
外出時はなるべく皮膚の露出を避けるようにしましょう。
けが・虫刺されの予防
けがや虫刺されをしないように注意し、虫よけスプレーなどを使用しましょう。
ただ、大切なのはケガや、虫に刺された後の対処です。
・ケガをした場合は、傷口を流水と石鹸で丁寧に洗浄
・虫に刺された場合は、決して掻いたりせず、
流水で流したあと、虫刺されの薬やかゆみ止めを塗る
(掻いてしまうと肌が傷つき、菌が入ってしまう原因になります。)
どちらの場合も、対処せずに放置することがないようにしましょう。
除毛について
カミソリは小さな傷を負いやすいため使用は避け、
電気シェーバーなど肌に負担がないものを使用してください。
また、脱毛クリームや永久脱毛については医師への相談が必要になります。
保湿
スキンケアの中で最も重要なのが保湿であり、毎日行うように指導を受けました。
入浴後に行うのはもちろん、ハンドクリームなどをこまめに塗ることも大切とのことです。
肌が乾燥していると傷ができやすくなり、菌が入ってしまうリスクが高まるからです。
使用する保湿剤に決まりがあるわけではないですが、
香料や添加物が少なく、アルコール成分が入っていないものを推奨しているとのことでした。
理学療法士さんからおすすめのクリームを伺いましたのでご紹介します。
(こちら以外の商品でも問題ないです)
①ベーテル 保湿ローション
どちらも成分は似ていますが、下記のように購入先と値段が違います。
・ベーテルは院内のコンビニやネットで購入でき、安価。
・キュレルはドラックストアやネットで購入でき、ベーテルより高価。
私は院内でベーテルを購入し使用しています。(院内での購入金額は¥1,100)
使用感はべたつきがなくサラッとしています。伸びもいいです。
ただ全身に使用すると1か月ぐらいしかもたなそうなので、
私は右上半身だけに使用して、その他の部位はもっと安価なクリームを使用しています。
②キュレル ローション
生活上の注意点
腕を高くする(拳上)
▽就寝時
手術した方の腕を心臓よりやや高い位置にできるよう、
腕の下にクッションやバスタオルを折りたたんだものを置くといいです。
(高さが出せれば何でもOKです。)
注意するポイントとしては、指先までしっかりクッションにのせることです。
指先までのせておかないと、指先にむくみが出てしまうことがあるからです。
▽デスクワーク時
なるべく肘まで机にのせることができると良いです。
できないようなら、膝の上にクッションを置くなどして
肘の位置を固定すると、高さも出すことができますし、
腕にかかる負荷の軽減できます。
また、途中で肘の曲げ伸ばしを行うようにしてください。
▽着席時
椅子に腰かけているときは、手はひじ掛けや膝の上に置くようにしてください。
腕を下にだらんとしているとむくみの原因になります。
子供を抱っこするとき
なるべく椅子に座り、腕にかかる体重を分散させるようにしてください。
手術した方の腕に体重がかかることは避けるようにしましょう。
衣類の選び方
下着はしめつけのないものを着用しましょう。
ブラジャーは肩ひもやアンダーバストの幅が広いものがおすすめです。
時計や指輪などもしめつけが少なくなるよう、緩めのサイズのものを着用してください。
(手術していない方の腕に付ける分には気にしなくていいです。)
その他
・重いものを運ぶときは小分けにして腕にかかる負荷を軽減してください。
・過労や睡眠不足にならないよう注意し、体調管理をしましょう。
・温泉やプールに入った後は、必ず流水で体を流してください。
(雑菌が体に残るのを防ぐため。)
また、傷があるときは利用を控えましょう。
・リンパ浮腫が起こりやすい腕での注射や血圧測定はなるべくやめてください。
(注射針で肌が傷つき、そこから菌が入ることを防ぎます。
血圧計での圧迫はむくみの原因になります。)
・リンパ浮腫が起こりやすい腕での、
鍼や灸、あんま、リンパマッサージは控えてください。
私が理学療法士さんへした質問
Q.リュックサックの使用はをしてもいいか?
A.使用しても構いません。
ただし、なるべく肩紐の幅が広く腕に負担が少ないものを使用するようにしてください。
また、できるだけ休憩を挟むようにしてリュックを下す時間を作ってください。
心配なら、事前に少しの時間使用して自分の腕に変化がないか試してみると安心だと思います。
Q.寝返り(手術した腕を下にする)をしてもいいか?
A.寝返りはしても構いません。
ただ、なるべく手術をしていない腕を下にすることを推奨します。
また、起きたときに腕が重く感じたり、むくみがあるように感じた場合は
病院で習ったような腕の筋肉を動かす体操をしてください。
Q.“炎症がない時でも、長湯や熱いお風呂への入浴は控えた方がよい”
と資料へ記載があるが、温泉に入っても問題はないのか?
A.過度に熱くない温度(一般的な温度40~45度ぐらい)なら全く問題ありません。
長湯は控えてください。
Q.術前のようにスキューバダイビングやシュノーケリングを行ってもいいか?
A.全く問題ありません。術後、先生から入浴許可が出たらOKです。
ただ、日焼け対策はしっかりしてください。
さいごに
今回理学療法士さんに多くのことを教わり、術後もほとんど元の生活に戻れることがわかり
とても嬉しく思いました。
それと同時に、まだ術前のように動かない腕に少しショックを受けています。
でも焦らず地道にリハビリを続けたら、きっとまた元のように腕を動かせるようになると信じて
やれることをやっていこうと思います。
リンパ浮腫の予防は今後一生行わなければいけない、私の生活の一部になります。
少し注意しなければいけないことが増えますが、
「慣れてしまいさえすれば、これから楽しいことをいくらでもできる!」
そう思えば大したことではないと思っています。
それに、この記事を読んでくださっている皆さんはきっと仲間。
自分と同じように術後の体と向き合いながら生活している人は大勢いますよね。
そう思うと自然に、「私も頑張ろう!」という気持ちになれます。
一緒にリンパ浮腫予防頑張っていきましょう♪
最後まで読んでいただきありがとうございました。